ミライエ

Profile プロフィール

宗像 由美子さんのプロフィール写真

宗像 由美子さん

    福島県石川郡平田村出身の宗像です。引っ越し直前まで音楽の教員を務め、楽譜が読めなくても自由な発想で音楽を楽しむことができる音楽遊びと即興表現に取り組みました。読書や料理をすることも好きで調理師免許も取得。「HeartBeatBase」には、素敵な音を奏でる楽器と幅広い年代が楽しめる本があります。これらに私の料理を加え、カフェやワークショップ、コンサートを企画していきます。

    豊かな緑が広がり鳥の声が響く東ヶ丘公園のふもとに、一軒の平屋があります。「初めてこの家を見た瞬間に、私はここに住むと確信しました」そう話すのは、千葉県から引っ越してきた宗像由美子さん。長年、音楽教員として働く傍ら、趣味の料理や読書にも熱心な生活を送ってきました。その経験をいかして、人が集まったり食事をしたりできる「HeartBeatBase」をオープン。2024年春にはカフェ営業もスタートします。暖かい陽ざしとごはんの香りが満ちた店内で、物件との出会いやリノベーションの道のりを聞きました。

    HeartBeatBase

    やりたいことを話してみたら、理想の家に連れて行ってもらえた

    Q.この物件にたどり着くまでの経緯を教えてください。

    南相馬市にくるまで、私は埼玉県で音楽教諭として働いていました。仕事は好きだったのですが、歳を重ねるうちに都会での生活には少し疲れ始めていて、自然が多くのんびりした田舎へ引っ越したいなと思うようになったんです。新しい土地では、子どもたちを集めて楽器を楽しんだり、料理を振る舞ったり、私の得意や好きなことで活動をしたいという思いがありました。

    引っ越し先にこだわりはなく、福島県の他にもさまざまな場所を巡ったのですが、この物件との出会いがきっかけで南相馬市に決めたんです。

    この物件は、仲介業者の方が直々に紹介してくださいました。実は、最初は賃貸アパートなど、小さな場所から始めようと思っていたんです。候補の部屋もいくつか見せてもらったのですが、思いのほか家賃が高く、これなら都会と同じくらいお金はかかるなと引っ越しの雲行きは少し危ぶまれて…..

    そんな私に、「新しい物件では何をしたいんですか?」と仲介業者の方が質問してくれました。希望の家賃や間取りではなく、やりたいことを聞いてくれた。その日は、お話をして帰ったのですが、その数日後にすぐ来てほしいと連絡をいただいて。これは何かあると思って駆け付け、連れてこられたのがこの場所でした。

    音楽教員時代に宗像さんが集めた楽器が置いてあり、触れたり、鳴らしたりできる

    内見したのは11月。紅葉が終わった山々を背に、夕陽を浴びて佇む平屋は落ち着きのある静かな雰囲気をまとっていて、見た瞬間に「ここに住む!」と確信しました。中に入ると、この二間続きの和室があって、子どもたちを集めたり、小さなお店をしたりするのにもピッタリだと思いました。キッチンが広いのも決め手の一つですね。

    内見時の様子
    欄間はそのまま残し、襖を外して八畳二間がオープンな空間に

    Q.まさに、運命的な出会い。では、契約もすぐに結ばれたんですか?

    いいえ、家を購入したのは一年半ほど経ってからです。気持ちとしては即決でしたが、費用のことを考えると、その場で決めることはできなくて。築40年ほどの家なので、住むにもリフォームが必要だったんですよね。家のことだけでなく、長く務めた教員の仕事をやり切りたい思いもありました。

    ありがたいことに、仲介業者さんは「ゆっくり考えていいですよ」と言ってくださり、本当に買う気があるならと待っていてくれました。家との出会いから約一年は仕事に没頭し、退職をして間もなく、購入の契約を結びました。

    空間の用途ごとに、リノベーションは2回に分けて

    Q.リノベーションはどのように進みましたか?

    この家は、住まいとカフェスペースのキッチン、2度リノベーションをしています。住まいのリノベーションが終わるまでは、当時家のあった千葉県と行ったり来たりの生活でした。

    春に家を購入し間もなくリノベーションの打ち合わせはしたのですが、コロナ禍とロシア・ウクライナ戦争で資材入荷の目途が立たず、なかなか工事が始まらなかったのは想定外でしたね。夏の終わりには引っ越せるかなと思っていたのですが、工事が始まったのは秋の始め、リフォーム完了は12月の半ばのことでした。

    工事の目途が立たなかったので、私は期間限定で復職をしたんです。そのため、工事に関する細かなやり取りは夫に任せていました。LINEや電話で連絡をとることが多かったです。仕事から帰ると、いつも私に進捗報告をしてくれました。

    夫・直樹さん(左)。千葉県から日帰りで進捗確認に来たこともあったそう
    押し入れだった部分は扉をとって、壁を塗り直し自由に使える収納スペースに。今は本と楽器がぴったり入っている

    Q.リノベーションで特に大変だったことは何ですか?

    壁の中や床下については工事を始めてみないと分かりませんね。この物件の場合、1回目の工事では、天井と壁に断熱材が入っていない事が分かりました。2回目の工事では、床下に断熱材や湿気止めが入っていなかった事が分かりました。どうりで冷えが厳しく、押し入れなどがかび臭かったわけです。これらの問題点を解決するために追加の工事が必要となり、費用が膨らみ、住まいとキッチンとで、2度大変な思いをしました。

    リノベーションに限らず新築でも、間取りなどを一生懸命に考えてしまいがちですが、床下や壁の中など、見えない部分の方がお金がかかることを痛感します。

    Q.新居や開業するために補助金は活用されましたか?

    住居部分には、「『住んでふくしま』空き家対策総合支援事業」を、カフェ部分は「福島県12市町村起業支援金」を活用しました。いずれも、福島県の補助事業です。

    住居と店舗部分がひとつ屋根の下にありますが、それぞれの補助金の対象が異なるのが少し複雑でした。例えば、カフェスペースのリフォームには、空き家対策支援事業の補助は対象外なんです。リノベーションを2度に分ける必要があったのもそのためでした。

    申請書類で分からないことがあるときには、「相双建設事務所」に頼りながら作成を進め、提出できたときにはホッとしましたね。起業支援のコンサルタントの方からも、親身になってアドバイスをいただきました。事務手続きも費用面でも、自分たちだけでは難しかったので、補助事業があって助かりました。

    キッチンリノベーション前の様子。画像左にある取っ手付きの棚は後付け
    重たい業務用のコンロをいれるためには、床の補強工事も必要だった

    焦らないで、やりたいことを着実に

    Q.庭のリノベーションについて教えてください。

    庭づくりは、三春市の業者さんにお願いしました。スパイスカレーに使うハーブを買いに出かけた際に、いい雰囲気のガーデニングショップを見つけたんです。庭のプランニングをやっている案内があり、連絡しました。

    測量に来てもらい、好みの花や理想のイメージを丁寧にヒアリングしていただきながら現在打ち合わせを進めている最中です。無機質な物置をどうにか良い感じにしたいと相談すると、ブルーベリーを植えようと提案してくださいました。私は壁にイラストを描くぐらいしか思いつかなかったんです。自分では考えつかないアイデアをいただけたことに、プロに頼む意味を感じました。

    Qこれからリノベーションする方に、メッセージをお願いします。

    急がないことが大事だと思います。物件や業者を探す際に、「今決めないと」と思ってやると失敗してしまうケースがあるんじゃないかなって。家探しでは、早く決めた人が住めるので、検討していた物件が誰かに渡ってしまう場合もあるかもしれませんが、それは縁がなかったということ、と捉えてもいいんじゃないでしょうか。長く住んだり、活動したりする場所にするのであれば、慎重になることは悪くないと思います。

    取材日はランチの試作真っ只中。カフェでは日替わりでスパイスカレーとおばんざいプレートを提供予定

    季節の移ろいや鳥のさえずりが美しいこの場所で、自分の胸がHeartBeat(=ワクワクドキドキ)することを、これから私はやっていきます。野菜をたっぷり使ったごはんを食べていただいたり、楽器を鳴らして楽しんでいただいたり、ワクワクドキドキする気持ちで共鳴できたら嬉しいです。

    • Share