
「僕は、福島県の小さな町で、町おこしを託された元バンドマン」———このフレーズからはじまるSNSの投稿を見かけたことはありませんか?投稿主は、南相馬市の地域おこし協力隊の橋本恭佑さん(通称:はっしー)。2025年5月に南相馬市へ移住し、現在はハンバーガー店のオープンに向けて準備を進めています。将来的には農業や福祉の事業も展開予定で、自宅兼事務所にする予定の空き家のDIYにも挑戦中。改修途中のご自宅を訪ね、事業をするための場づくりについて聞きました。
やりたいことにピッタリの空き家を紹介してもらえた
Q.南相馬市に移住するまでの経緯を教えてください。
音楽大学を卒業してからずっと、サックス奏者として生活をしていました。でも、コロナ禍になってしまい音楽業界は立ち行かなくなって、収入源であった舞台は全滅。助成金をいただきながらなんとか生活していたんですが、電気工事士に転身することにしました。実務経験がなくても取れる国家資格を取得することで、すぐに手に職をつけられたんです。5年ほど電気工事士として働いていました。

そうこうするうちに2024年5月、大学時代の同級生で、地域おこし協力隊として活動していた小野雅也くんに誘われ、南相馬市のコンサートに出演しました。その時に地元の方から「月に一度、40分かけて家族でマクドナルドに行くのが恒例行事なんだ」という話を聞いたんです。それがすごく印象に残って。僕にとっても、子どもの頃はマクドナルドはごちそうだったけれど、そんなに遠くの存在ではなかったんですよね。
それから2025年1月に、今度は地域おこし協力隊の体験プログラムがあるから来てみない?と声をかけてもらい、参加しました。2泊3日、地域をめぐったり、事業について考えたりする中でハンバーガー屋をやる決意が固まり、南相馬市へ来ました。
Q.地域おこし協力隊として、どのような事業に取り組んでいるのでしょうか。
事業計画を作るときには「ハンバーガー屋」以外にも取り組めることを検討して、「農業」「就労継続支援B型」の3つの軸で計画をつくりました。
「農業」は、ハンバーガーに使う野菜を自分で育てられたらいいなと思い、事業の一つにしました。「就労継続支援B型」は、実は家族の夢を引き継いだようなものです。僕の両親はケアマネージャーとして介護の仕事をしていて、老人ホームをつくり、そこで家族の面倒をみることが夢でした。だけど、父が亡くなってしまって、代わりに僕がつくりたいと思っていたんです。ただ、老人ホームをつくるのは自分の代ではできそうにないほど大変というのがわかって。今できることをという思いで、就労支援を事業の一つにすることにしました。
「就労継続支援B型」・・・しょう害や難病のある人が利用できる福祉サービスのひとつ

Q.この物件はどのように見つけたのですか?
地域おこし協力隊の体験プログラム中に、ミライエさんに連れてきてもらったんです。住まいや事業に使うための候補となる物件をいくつか紹介いただく中で、目星をつけていました。
片づけたり改修したりする必要はあるけど、建物としては問題ない空き家。草は伸び放題になっていたものの農地付き。やりたいことをするにはうってつけの物件でした。



Q.賃貸契約ですか?購入されましたか?
1年後に購入する約束で、賃貸契約を結んでいます。賃貸だと思うように手をつけられない部分もあると思い、最初から買うつもりでいたのですが、移住者で起業準備中の身ではローンを組むことができず…….
それでミライエさんに相談したところ、不動産会社経由で、家主さんに掛け合ってもらうことができました。家主さんも最初は売却を希望されていたのですが、事情を理解してくださり、無理のない賃料も設定していただくことができ、とても助かっています
自己完結型DIYと、設計士と進めるリノベーション
Q.ご自宅の改修はどのように進めているのでしょうか?
自宅は僕一人で、Youtubeを見ながらDIYをしています。これまでにやったことはなかったので初心者ですが、失敗をしながら少しずつ進めてきました。電気工事も、家庭内配線を行うのは実は初めてで調べながら取り組んでいます。資格を持っているので工事をするのは問題ないんですよ。



Q.ハンバーガー店は、設計士さんと一緒にリノベーションしていると聞きました。完全セルフのDIYとどのように違いますか?
店舗の隣に住んでいる設計士の中川雄斗さんに設計をお願いしています。工事は僕がメインで中川さんに手伝っていただきながら、間もなく完成というところまできました。
設計士さんと一緒に進めるのはめちゃくちゃ面白くて、一人でやるのとは全然違います。中川さんは、目指している店の姿だけでなく、まちとどのように関わりたいかを丁寧にヒアリングしてくれます。そこで話した理想が形になっていくのはワクワクします。
例えば「ふらっと立ち寄れて、ちょっと会話して、またどっか出かけられる気軽な雰囲気にしたい」と話したら、それが実現されるように工夫された案を出してくれるんです。ドア一つとっても、温かみのある素材があれば、重厚感を感じるものもありますよね。ドアの開き方もどうするかなど、一つひとつをこだわりながら決めていくことに感動しました。
プロの視点が加わることで、自分ではこだわれないようなところに気づいてもらえているのは大きいです。仕上がりも変わります。僕一人でやっていると、壁を張り替えるときにできる隙間も『まぁいっか』って、60点の出来で満足しちゃうんですよ(笑)でも中川さんと一緒だとピシッとした、100点満点の仕上げを目指せるんですよね。
勢い任せに一人でバーっとやっていては出せない奥行きのようなものが出るなあと感じます。意味のある空間ができあがっていますよ。

自分の足で歩き「家がほしい」と伝えること
Q.DIYで大変だったことを教えてください。
自宅の方ですが、天井がデコボコしていて壁紙が貼れませんでした。平面になるようにならしてから貼るべきだったのに、面倒くさくてやらなかったのがダメでしたね。同様に、砂壁に直接壁紙を貼ったのもベロンと剥がれてきちゃいました。
水道が出ないことにも困りました。家を借りるときには気づいていなかったんです。水が出さえすれば住みながら家の改修もできたのですが、それが難しい。現在は小野さんの家にお世話になっています。工事をするにもお金がかかるので、すぐに依頼ができなくて。申請中の移住支援金がもうすぐ入金されるので、それから工事をしてもらう予定です。



Q.事業をするために空き家探しをする人へメッセージをお願いします。
地元の人と話をたくさんすると、家との出会いも広がると思います。自分の足で歩きながら「空き家を買いたいんですよね」って、あちこちで伝える。そうしているうちに「〇〇さんのところ、家を手放したいって言っていたよ」と情報が舞い込んでくることがあるんですよ。そういうことが起こるのは、地方の家探しならではだと思います。
それから、焦らない方がいいですね。きっと物件は見つかります。ミライエさんも頼りながら、自分の想いを周りに伝えてみてください。
ミライエ担当者から一言




